Esnus’s blog

知的障害者の母親を持つということ

#8.感覚の鈍麻について

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人間には五感(視、聴、嗅、味、触)があります。

敏感な人は六感、或いはそれ以上をもつ人がいます。

 

ひろ江は五感に敏感ではなく、時として無いように見えます。

今回はひろ江の知覚についてお話します。

 

痛みの知覚について

ひろ江の、両足指の付け根が大きく変形し、

その為、指が前を向いていない。

変形が大きい為、関節リウマチにも見えるほどである。

 

いつから変形が始まったのかと尋ねると

 「痛くないから気づかなかった」 と言う。

通常、骨が変形するときの痛みは強く、

眠れない程の痛みである。

骨が変形する過程で、痛くないから気づかないというのは、

不思議な話である。

 

ひろ江はお産も痛くなかったという。無痛分娩だったらしいが、

麻酔が効く前後の痛みは誰でも経験する。

ひろ江は、お産の痛みがゼロだったかのように話す。

又、生理痛なども全くない。

ひろ江が痛み止めを内服する姿を見たことはない。

 

皮膚の感覚について

ひろ江は気温の寒暖についても、あまり感じていない。

勝手口のドアは、ペラペラのべニア板1枚なので

スースーと冷気が入ってくる。

底冷えする寒さなのだが

ひろ江は寒さを感じない。

 

暑くても寒くても、気圧が高くても低くても

気候の変化について口にすることがない。

台風の前など、気圧の低さに気付くこともない。

 

視覚について

ひろ江は視力が良く、裸眼だが

多くのモノが視野に入っていない。

例えば、誰かの様子がおかしい、雰囲気が違う、元気がない、等

視覚的な情報に気づかない。

他の人が気づき、ひろ江だけが気づかない事が多々ある。

 

紙芝居や、動画のような

単純明快なものは目に入り、反応をしめすが

そこに、何かしら想像の余地が含まれると、反応しない。

 

聴覚について

ひろ江の聴力は普通だが、多くの情報をキャッチしない。

聞こえていても、上の空で聞き逃したり・・・

或いは、何度も聞き返す。

 

又、否認も強く、聞きたくない情報はブロックしてしまう。

唯一、雑音には敏感で、聞こえると疲れるという。

 

その他

五感とは異なるが、人間には空間認知能力がある為、

距離感が、ある程度把握できる。

ひろ江は、他人やモノとの距離感がないのか、

他人と話す際に、ピッタリくっつくほど近づく事がある。

あるいは、目の前に危険物があっても気づかない事がある。

 

まとめ

 

ひろ江の場合、見たり聞いたり、感知した情報が
どこまで認識されているのか
脳でどう処理されるのか、或いはされないのか・・・

素人には判らない。

 

多くの情報がひろ江の中で留まることなく、

素通りしていく。

 

ひろ江に情報をインプットしても

処理された情報がアウトプットされることはない。

 

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考察:

 

発達障害には感覚過敏のほかに「感覚鈍麻」(※)があるという。

ひろ江がこれに該当するのかは不明であるが

いずれにしても、ひろ江は多くを感知していない。

 

感覚がないということは

時として、自身の身体を守ることができない。

実際、ひろ江は痛みを感じなかった為

足の変形を阻止することができなかった。

 

又、自身が感覚を持ち合わせていなければ

子供を危険から守ることは難しいだろう。

 

娘が身体の不調を抱えていても、ひろ江は気付かない。

症状を訴えられても、出来ることが限られている。

些細な症状でも、早期に対処しなければ、

いずれ慢性化して治りづらくなる。

案の定、万事がその通りになる。

 

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ひろ江の居る世界はどんな世界だろうかと、筆者は想像する。

時間軸がなく、認知する情報が少なく、知覚も少ない。

その世界は、彩のないモノトーンな世界なのではないだろうか。

それにより、感情も平坦化しているのではないか。

 

ひろ江が幸せであればそれで良いが

彼女は幸せを感じていない。

しかし、幸せを掴むために

何かしらの行動も起こさない。

アクションを起こさなければ何も変わらず、

明日も明後日も1年後も10年後も同じ毎日である。

 

ひろ江には、自由な時間と健康と、そこそこのお金がある。

やろうと思えば何でもできる。

しかし、ひろ江には意思がなく

幸せではない理由を他人のせいにする。

 

ネズミは回転車の上をくるくると走るが

そこには意思や目的がない。

ひろ江の人生にも、意思や目的というものが存在しない。

或いは、存在していてもそれが見えない。

 

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全ての行動について、

考えずに身体のみを動かしているように見える。

ひろ江がゴールにむかって

歩んでいる訳ではないことは確かである。

 

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世の中には、食べるためだけに精いっぱいの人が沢山いる。

せめて、ひろ江が恵まれた環境に気づくことが出来たら

幸せや感謝を感じることができるように思う。

 

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(※)参考情報

知られざる発達障害「感覚鈍麻」

“骨折しても痛くない” ~知られざる発達障害「感覚鈍麻」~|サイカルジャーナル|NHK NEWS WEB