Esnus’s blog

知的障害者の母親を持つということ

#9自己を認識できない・自分が誰か判らない

 

 
 
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今回は、発達障害ゆえの、自己認識の無さについて
触れたいと思います。

発達障害者は客観的に自己認知して、得手不得手を理解したり、
人生の長期的なビジョンを描いたりするのが苦手である。
そのため空想的、非現実的、自己愛的な職業選択をすることがある…
しかし、彼らの特定分野へのこだわり…を活かせば、
才能を開花させる可能性がある (心療内科医 星野仁彦)

星野仁彦先生が上記で述べられているように
ひろ江も自己認識を困難とします。
実例をあげたいと思います。

自分が誰か判らない


ひろ江は自分自身について判らない事が多い。
得意、不得意、好き、嫌い、を含め
多くについて、気付いていない。
自分の意見も持たない。

ひろ江は毎朝、起床して一番に歯を磨くが
理由を尋ねられると、答えることが出来ない。

ひろ江は今の生活に不満をもち
本望ではない生活を送っていると言うが
どうなりたいかと尋ねられると
答えることが出来ない。

何事についても
理由を尋ねられると、答えることができない。

ひろ江は日常的に
近しい親族(兄弟姉妹、夫、娘)を悪く言うが
何が気に入らないのかと尋ねられると
暫し考えた後・・・
「家族想いじゃない」
と抽象的に答える。
じゃあ、具体的に何をして欲しいのかと
尋ねられると
答えることが出来ない。

全般について
ひろ江が自分の意思や考えを話すことはない。
過去の経験について語ることもない。
聞かれても答えられることは
非常に限られている。
ほぼ、無いに等しいと言っても過言ではない。

他者と自分の区別


ひろ江は、自己と他者の区別がつかない事がある。
無意識に別人になる事がある。

例えば、近所のAさんと話した場合、
Aさんの口調や語尾、言葉使いのみならず
キャラクターもAさんになり
暫しAさんになりきって話す。

親戚のBさんと話した直後は
暫し、Bさんのようになる。

また、世間の人を判断する際
ひろ江は、常に学歴を意識するが
その際、ひろ江は自身の兄弟姉妹になり替わる。

兄弟姉妹はエリート揃いで
常にトップの成績だったらしい。
彼等の学歴を基準においている為

「〇〇は、大したことない人間だ」
「〇〇は特段、優秀じゃない」
「その学校じゃ、どうってことない成績だ」・・等
全ての人を見下して話す。

平均点すらとれなかったひろ江自身は
そこには存在せず、
ひろ江は兄弟姉妹になり替わってしまう。
ひろ江は自覚していないが
第3者からみれば、
突然別人になったようなひろ江に、違和感をもつ。
又、大変不自然で奇妙である。

上記のように
ひろ江は自覚がないままに
別人になってしまう。

無意識だからこそ
病的に見えてしまう。
ひろ江は、自己を確立できていないように見える。

セルフイメージ1

長期的なビジョンを描けない


ひろ江は、パートなどで就労することを望まない。
自ら望んで専業主婦をしているが
自身の選択に気づかない。

子供に手がかからなくなっても
時間ができても尚、生活を変えることはないが
自らその生活を望んでいることに
気づかない。

望んだ生活が出来るのであれば
恵まれた環境だが
自身の幸せにも気づかない。
気づかないので感謝することもない。
常に、この生活は本望ではないと話す。

自己を知らなければ、 
セルフコントロールは困難である。
将来何をしたいのか、判る由もない。

加えて、もともと時間の概念がなく、
ひろ江には未来軸が存在しない。
長い人生の設計は
一生される事が無い。

時空のゆがみ 時計②

考察


ひろ江は、夫との結婚は本望ではなかったと話す。
タカシと見合いで会い
気乗りしなかったが
嫌々ながら結婚したと話す。

しかし、ほかの男性と結婚しても
ひろ江の生活は果たして違っただろうか。
基本的に、毎日おなじ事をくりかえす様子が
目に浮かぶ。
実際、ひろ江が違う生活をしている姿を
見たことがない。
ひろ江は、果たして
職業に就くことができたのだろうか。

ひろ江は五感、自己認識、魂、などが
ひろ江という個体の中で統合されておらず、
アイデンティティが形成されていないように見える。
その場、その場で考え方や発言が変わる。
ひろ江も自己を認識していない。

セルフイメージ3

自分のことが判らなければ、
他人に理解される筈もない。
ひろ江の人間関係は希薄である。

又、自己を知らなければ、セルフコントロールは困難である。
将来何をしたいのか、判る由もない。
判らなければ、行動を起こせる筈もなく
毎日同じ事の繰り返しである。
舵取りの居ない船のようなものである。
ひろ江の世界は混沌としているように見える。

意思をもたないひろ江は、
人生の岐路で決断ができない。
ひろ江には、誰かしらキーパーソンが
必要である。
ひろ江の障害を知り、何を困難とし、
どんなヘルプを必要としているのか、
生涯に渡り、適切なタイミングで適切な方向へ
舵取りをしてくれるような
誰かしらが必要である。

ひろ江が病識をもたず
誰にも気づかれないまま、暮らしてきたことは
ひろ江にとっては、幸せとは言い難い。

大人のひろ江に、いまさら助言できる人は少ない。
もっと早い段階であれば違っただろう。
本人がヘルプを望まない限り、
誰も助けることは出来ない。

夫亡きあとは、一人で暮らしていけるのだろうか。
行く末は混沌としている。